赫赫(Kakkaku) トドロクツキ

「私はこの時代の存在ではないし、他を害してまで生きるつもりもない。 腹さえ満たしてくれるなら、この身は貴様らの好きに使うといい」
「このような草の何が美味いのか……理解に苦しむ。 ……なんだ、要らないなら返せ? 断る、食わぬとは言っていないだろう」
「あの臆病な竜を変えた“外界”は、一体どんなものかと思ったが──────存外、悪くないものだな」
- 意地っ張り(徒がすき)
- 年齢 / 不明 推定100歳前後
- 身長 / 約200cm(種族としてはとても小柄)
- 一人称 / 私
- 他称 / 貴様
過去であり、存在したかもしれないどこかからタイムマシンによって喚ばれた、古代の獣。
太陽の日差しによって強く活性する遺伝子を持ち、その遺伝子によって昂る己を厭い、陽の当たらない暗い場所を好む。現代風にいえば引きこもり。
元々はとても穏やかな性質で、種族としては小柄なのもあり、無用な争いを好まない。
《古代活性》により昂った時のみ攻撃的な側面が表出するが、前述の通りその側面を「疲れる」といい厭っている。
やたら尊大な物言いをするわりに、己にも他者にもそれほど関心がない。気付けば勝手に丸まって眠っていて、話し掛けても一言二言返してくれるのみでまるで会話にならない。
現在は縁あってイヴライラの庇護・もしくは管理下にあり、呼ばれればついてくるものの、常に眠そうにしている。
とはいえ見知らぬ土地に赴けば、耳がピクビク動いていたり、尾がゆったりと振られたりと、それなりに外には興味がある様子を見せる。
肉食で肉類を使ったサンドイッチを好むが、葉物中心の物でも出されたものは文句を言いつつ綺麗に平らげる食いしん坊な一面も。
身元引受人の作るサンドイッチが特に好物。
くじデアにおける立ち位置
かの博士により、現代に強制召喚された最初のパラドックス。
気性の穏やかな彼は、突然転移させられた先でも取り乱すこと無く、「貴殿が私を呼んだのか」と問い、差し出されたボールに収まる運命を受け入れた。
召喚後は、エリアゼロに駐屯する唯一のニンゲンであった博士が語る《息子》とやらの話を聞かされたり、自身の次に呼ばれた幼子のような《緋竜》の監視を命じられたり、現代で言う博士の相棒のような立ち位置にいた(あくまで『ような』)
《博士の息子》の姿は何度か見たことがある程度だが、博士が《息子》と《緋竜》を《家族》と呼び大切なものと愛し語る姿を面倒くさそうに眺めていた。
時が経ち、たくさんのパラドックス達が呼ばれていく中、彼等を制御する役割を与えられ、渋々ながら彼はその役目を全うした。
その最中、緋竜と全く同じ姿をした《ツバサノオウ》と名乗る個体が新たに召喚され、粛々と過ぎるのみだった日々が一転する。
ツバサノオウはこれまでのパラドックス達とは違い、自らを身勝手に呼び出した博士に憤ると、その命を奪ってしまった
元いた緋竜も同じように手にかけられかけるが、博士が最後の力で自らを盾に緋竜を逃がし、彼にも『最後の命令』として逃亡を見届けるように命じた。
「なぜ、そこまでしてあれを逃した」
彼には分からなかった。身代わりになってまで他者を優先する気持ちが。絶えようとする命に問えば、かの博士は言った。「家族だから」と。
その後、かの博士の意志を継いだAIにもそのまま付き従っていたが、ある日謎を暴こうとやってきた少年達を退けるため、かの博士すら一度も強制しなかった《古代活性》を、AIによって強制的に発動される。
久方ぶりの活性で無理な戦いを強いられ、更に《緋々色の鼓動》によって無理やり底上げされた遺伝子はボロボロになり、敗北後に動くこともできず、やがて気を失った。
気付けばAIはいなくなっていて、タイムマシンも壊れていた。
彼は現代に取り残されてしまい、故郷に帰る手段を失ってしまった。
ならばこのまま朽ちるまで、と。眠りに就こうとしたとき、あの日逃がした緋竜が、その身を拾い上げて少年達の元に運んだ。
「……貴様の連れてきたニンゲン諸共害そうとした私を、なぜ助ける」
「博士が、お前にも一応家族といっていたからな。えーあい?の代わりに迎えに来た」
家族。かの博士も言っていた言葉を思い出す。
「──不可解だ。 だが、」
彼はその瞬間から、ほんの少し、その家族とやらに興味を抱くようになり、その言葉はこれから先の彼を導くことになる。
古代活性と因果
現在は「疲れる」程度で済んでいるが、召喚直後は記憶を無くす程度の暴走に見舞われていた。
それは彼にとって不本意な事であったが、少しずつ現代に身体を慣らすことによって、ゆっくりと緩和する他なかった。
そしてある日、その暴走は彼の与り知らぬところで、ある命を奪った。
エリアゼロには、時折探索隊が入っており、それは博士と過去に共同研究をしていた施設の者達で、彼らは然るべき道筋でやってくる。
それは、不慮の事故という他ない出来事だった。
とある別の探索隊が、違法の侵入を果たした。彼らは然るべき道筋を外れ、強行突破の末、彼と対面した。
洞窟の奥深くで巨大な龍の姿を目にした彼らは、最悪にもその場を照らすため、疑似太陽を呼ぶ技を放ち、その太陽は彼の暴走を誘発した。
いくつかのポケモンと、いくつかのニンゲンの命がその場で散り、正気を取り戻した彼はより己の特性を厭うようになった。
唯一、瀕死ながら意識のあった♀のパーモットと言葉を交わすことになり、そのパーモットが身を賭して回復させた一匹のニャオハを「最後の力で貴方の翼を治すから、彼を逃がして欲しい」と願われ、せめてもの贖いとしてニャオハをエリアゼロの出口付近へと運んだ。
まさかそのニャオハが成長し、復讐の為にエリアゼロに舞い戻ってくるなどこれっぽっちも思っていなかった。
イヴライラとの関係
赫赫という名を付けた相手。公的にはパラドックスという危険な存在と定義される赫赫の、いわゆる身元引受人。
緋龍が連れてきた少年達と共にやってきた青年であり、過去に手にかけた存在が逃がしてと願ったニャオハもといマスカーニャ本人。
イヴライラにとっては赫赫は仇に当たるのだが、その件が発覚するのは、一連の事件の後、治療の為にエリアゼロの外へ連れ出されたあとになる。
一度は喉元に刃を突き付けられるが、「好きにしろ、惜しい命でもない」と興味無さそうに言う赫赫に、イヴライラは刃を下げた。
(逃がされたと知ったあと自暴自棄だった己を重ねてしまい、それ以上できなかったのもあるが、緋龍が家族だと呼ぶ存在を害することができなかった面もある)
「貴様もその“家族”とやらを優先して、私を見逃すのか」
「絶対に許したくない。けれど、ころさない。──コイツ(緋龍)が、お前を家族と呼んで助けに行ったからな」
その後、イヴライラをあの日埋葬したパーモットの墓の元へと導く。
あのパーモットだけは、なぜだか弔う気になり、博士の手を借りてエリアの片隅に埋葬していた。
「貴様だけは助けて欲しい、と。あのパーモットは言っていた。自分ではなく、貴様を助けろと。──あれも、貴様の“家族”なのか」
「そうだな、家族みたいな存在だった」
「……不可解だな、その家族というものは。貴様らのいう“情”とやらは私には理解が難しい」
「お前にもそのうち分かるよ、多分な」
「その内、か。──ならばイヴ、貴様がそれを私に教えろ」
「は?」
「私の身元引受人なのだろう。それならば、教えるのも貴様の役目だ。どいつもこいつも家族の情で不可解な行動をする。私はそれに、興味が沸いた。それが分かったら、礼としてこの命は貴様にやろう。そもそも貴様は、この首を跳ねるつもりで私を探していたのだろう?」
「いや、もう要らんし…………というかどういう意味で言ってんのお前…………困るんですけど…………?」