イヴライラ

イヴライラ(Ivlaira) マスカーニャ♂

「もーー!自分の世話くらい自分でしてくれないかなキミ達!!!お兄さんはキミらのママじゃないです!!」
「えー……やるの?本当に?俺達がわざわざ首突っ込まなくてもよくない?……わかったよやるよー!もー!お人好ってこれだから!」
「お兄さんは本来不真面目枠のはずなんだけどにゃあ……」
「社会人は『仕事』って言われたらやらないわけにはいかないわけでー……。まぁでも、悪くない旅ではあるよ、忙しないけど、賑やかで、掛け替えのない時間。………頭の痛い事も多いけどね、寧ろそっちのが多いかも……」

  • むじゃき(たべるのがだいすき)
  • 年齢 / 24歳
  • 身長 / 175㎝
  • 一人称 / 俺 お兄さん
  • 他称 / キミ 

橙学園の研究室に所属する青年。……だったが、ひょんな事から学生たちにまざって≪課外授業≫の旅に出かけることとなった。
当初は『引率の仕事』として嫌々……といった様子だったが、旅の中で巡り会う様々なことに奔走する間に、当事者として意識を変えていくようになり、やがて彼は一つの過去に巡り会うことになる。

自身の興味を惹くこと以外・特に面倒な事は避けて通りたいが、最終的に断り切れずに「はいはい判りました、やるよやらせて頂きます!」と折れてしまうタイプのお人好し。
腹の底で良からぬことを考えていそうな見た目から疑いの眼差しを向けられがちで、本人もたまにそのように振舞うが、根っからの邪気の無い善人。
元々学園から職員として収入を得ている社会人で、『不真面目』を自称しながらも責任はきちんと果たすが、だからこそ責任のついてくることはやりたくない派。
各所に顔を出していた点でテーブルシティでは顔が広く、また各町にも友人や仕事仲間がぽつぽつといる。
現在同パーティにいるレランパモの実質的保護者で、宝探しに出るまでは彼を学園に通わせながら二人で生活しており、一通りの家事・適当な食材で料理などのいわゆる『主夫スキル』から、気付けばパーティ全体の保護者となっているが、当然ながら不本意。
『俺はキミらのママじゃないんだけど~』が気付けば口癖になっている。
以上からあまり草猫族らしくないものの、自分以外が頼られているのを見るとちょっとばかり機嫌を損ねる『嫉妬……?』な種族らしさ(?)はある。

本人は『俺はインドア』というものの、冒険慣れしており窮地に強く土壇場で力を発揮し、普段の姿からは想像もできない冷酷さを見せる。
それはイヴライラ自身の過去に起因するのだが、尋ねられる機会があっても『昔のことだからねー』とはぐらかしてしまう。

生い立ち

生まれは既に亡き研究室。とあるプロジェクトの戦闘用個体として生を受け、多数の子供たちと共に教育を受けていたが、優秀と判定を受けた日、何者かに誘拐されてしまった。
名も無き少年を拐ったのは、その昔凍結された《エリアゼロ探索隊》を違法に引き継いだ施設で、彼はその施設における、探索隊の戦闘員として連れ去られてきたようだった。
誘拐先が違法であることは察したが、小さな少年が抵抗するのはあまりにも難しく、彼はそのままその施設に飼われる事を受け入れた。

しばらくして、彼に姉のような存在ができた。
その施設で出会った色違いのパーモットの女性は、幼い頃からここで飼われており、探索隊の医療隊員でもあった。
誘拐されてきた少年を不憫に思い、弟のように優しくしてくれた彼女を、少年は「姉ちゃん」と呼ぶようになり、懐き、やがてその思慕は恋慕になり始めていた。
彼女が「実は自分には子供がいて、その子供も施設に取り上げられた。その子の為に私は離れられないけど、いつかキミは元の場所に逃がしてあげたいと思ってる」とそっと打ち明けてきた時、失恋に落ち込んだけれど、自分が《姉ちゃん》を守るのだとも誓った。

数年後、施設はとうとうエリアゼロへと侵入を果たすことを宣言した。
勿論戦闘員の少年と医療隊員の《姉ちゃん》も探索隊として大穴に潜り──その先で怪物のような《偃月竜》に遭遇する。
偃月竜がにたりと嗤ったあと──あっけなく探索隊は壊滅した。《姉ちゃん》だけでも守りたかった少年は、竜の前ではあまりにも非力だった。

気付けば少年はエリアゼロの入口に、無傷で転がっていた。
負ったはずの大怪我は、ズタボロになった衣服を残して綺麗に消えていた。代わりに、他には誰もいなかった。──唯一手の中に握っていた《姉ちゃん》が大切に持っていたはずの、血だらけのロケットを除いて。
ロケットのなかにあったのは、まだ幼いパモの写真だった。

その後、少年はエリアゼロを管理する学園に、同じく違法施設から救出された個体たちと共に保護された。
その中に、写真に映っていたパモの赤子を見つけ、少年は保護してくれた大人達へと「こいつ弟みたいな子なんです、だからこの子は俺に面倒を見させてください」と、兄代わりとして共にいる事を望んだ。
「《姉ちゃん》の代わりに、《姉ちゃん》の大切な存在を、生き残った自分が守るのだ」と。

数十年後、大人になった少年に、もう一度エリアゼロに踏み入れる機会が巡ってくる。
そして思い出す、記憶の中にある、《姉ちゃん》を奪った偃月の嘲笑を。
そうしてあの日よりもずっと強くなった青年は、大切な人を探しに行くことを決めた。
もしかしたら、姉ちゃんはまだ生きているかもしれない、と。──駄目でも、仇を取るのだ、と。

青年が、あの偃月もまた、あの出来事を悔いているのだと知るのはそれから少し先のこと。

社会人で研究者

橙学園に併設される研究室《テラスタル研究所》に所属しており、テラスタルと各地の結晶を研究、調査していた。
フィールドワークが中心のため、各地にはその縁で知り合ったり、実際に結晶の洞窟への同行協力を依頼している仕事仲間が多く、かなり顔が広い。
エリアゼロに踏み入れた経験と、地頭の良さから重宝されていたが、エリアゼロから飛び出してきたと思わしき《緋竜》が確認され、とある生徒が懐かれてしまったことから、その生徒のパートナーとして緋竜の監視を請け負うことに。
上司命令には従わざるを得ず……という態度をとっているが、心の底では「これは転機だ」と誰よりもエリアゼロへの到達を切望している。
当初は緋竜などどうでも良く、頭にあるのは偃月の事だけだったが、その考えは旅の中で少しずつ、緋竜への仲間意識と、仲間の身の安全──今度こそ、大切な者を守り抜くのだと変化していく。

「本当に行くのか?あの場所は危険で──いや、これで辞めるならハナからコイツと旅なんてしてないか。しょーがない、お兄さんも最後まで一緒行くよ」

実は彼の生まれた研究室が、処分を受けて真っ当に再起したのが《テラスタル研究所》だったりする。

忘れたくないひと

《姉ちゃん》と呼んでいた誘拐された先で出会ったひと。
一人ぼっちで寂しがっていたイヴライラに優しくしてくれた名も無き色違いパーモットの女性で、レランパモの母親。また遠くはあるが、ペシュリィの叔母にあたる。
まだ小さなイヴライラの記憶では学生程度だが、20代の経産婦。
施設で《再起の祈り》を使用させる捨て駒として教育され、更にスペアを作る名目で、強い♂との間に何匹も子供も産まされていた。
レランパモはその末の子で、他の彼女の子供はいずれも不採用個体として処分されている。
そんな境遇においても折れなかった心の強さの持ち主で、明るく、茶目っ気のある性格。
イヴライラの事は弟として可愛がっていて、歳が離れすぎてそういう対象としては見ていなかったが、好意を向けられているのは知っていた。
暴走状態が落ち着いた偃月=赫赫が、本来は穏やかな気質なのを見抜き、最後の力でイヴライラを《再起の祈り》によって回復させ、赫赫に逃がすように頼んだあと、静かに息を引き取った。
その亡骸は赫赫によってエリアゼロの片隅に埋葬されている。

「姉ちゃんね、この探索が終わったらしばらく外に出させろって約束取り付けさせたの、凄いでしょ? 一緒にキミも連れてくように言ったから──絶対、キミを逃がしてあげるからね。だから、ちゃんと2人で帰ってこよう」